研究テーマ

担当:山本規雄(2003.04.01(B4)〜2006.03.31(M2))

研究背景及び目的

 ヒ素は元来、地球上に微量ながら広く分布する元素であり、それらが人為作用や自然作用を受けて環境中に放出される。近年、先進国などではしばしば土壌環境基準を超えるヒ素が検出されており、また、バングラデシュやインド西ベンガル地方などでは、ヒ素を高濃度で含む地層からの地下水の取水により飲料水にヒ素が溶け込んだ結果、大規模なヒ素中毒が起こり問題となっている。

 自然環境中においてヒ素(As)は、そのほとんどが無機態のヒ酸あるいは亜ヒ酸の形で存在する(図1)。土壌や底泥環境中においては、好気状態では大半がヒ酸(As(X))の形で存在し、土壌粒子に吸着・固定化されているが(図1-左図)、嫌気状態となると、より毒性が高く吸着性の低い亜ヒ酸(As(V))の形となって水相へと溶出する(図1-右図)、すなわちヒ素可動化が起こるとされている。

 このヒ素可動化は、土壌粒子等へのヒ素の吸着に大きく寄与している3価の酸化鉄鉱物の還元的可溶化(Fe(V)-As→Fe(U) + As)やヒ酸亜ヒ酸への還元(As(X)As(V))により促されるとされており、微生物作用の関わりが指摘されている(図2)。しかし、これら微生物によるヒ素可動化に関する研究のほとんどの場合が、長期に亘るヒ素汚染を受けた環境中より得られた微生物を用いた純粋培養系で行われており、広範に自然環境中におけるヒ素可動化ポテンシャルを評価したものはほとんどない。ヒ素汚染環境のリスクを評価し、適切な対策を講じる上では、これらの知見を得ることが必要不可欠であると言える。よって、本研究ではヒ素可動化に関わる微生物に着目して、自然環境中における微生物によるヒ素可動化ポテンシャルを評価することを目的として、種々の検討を行っている。



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